※現在、Blum & Poeは、アポイント制にて開廊しています。
BLUM & POE東京では、大阪生まれの作家、浜名一憲と大井戸猩猩による二人展を開催いたします。本展では、精妙で複雑さをはらんだ自然という存在から大きな影響を受けてきた浜名の陶芸作品、大井戸の絵画作品を通して、東京を拠点とするボタニカル・アーティストのT S U B A K Iによる植物のしつらえと共に、作家たちのあくなき取り組みを紹介します。
紀元前から作られてきた伝統的な日本の壺から着想を受け、浜名一憲は、信楽産の自然土を用い、巨大でのびやかな陶芸作品を制作してきました。即興的かつ実験的に成形されたその陶芸作品は、陶芸の豊かな歴史や表現を踏襲しながらも、最古から存在する日本の創作の営みである陶芸に現代的な視座を与えていると言えるでしょう。浜名は、千葉の房総半島での日常生活やスタジオを取り囲む自然のリズムと呼応するように、スローで緩やかな制作プロセスをその創作活動に取り入れてきました。窯から出されたばかりの作品は、自身の太平洋に面した海岸に程近いスタジオの外の環境に次々と置かれ、海からの塩まじりの空気を存分に吸い込んでいくように呼吸しています。その作品群が、燦然と輝く太陽の下で、乾燥にさらされ、竹林の中に抱かれ、海塩で浸食されていく過程に見るように、自然はその作品制作のプロセスにも様々な変化を与える重要な役割を演じています。自らの生活様式、都市から離れた環境に身を置くこと、米の自然栽培やイワシ漁への興味といった作家を取り巻く種々の要素は、その陶芸制作の方法にも影響を与えています。その一方で、サイ・トゥオンブリーやイサム・ノグチといった現代美術からの参照や、何世紀にも渡って発展してきた侘び寂びといった日本的思想からの影響もまた、その潤沢で豊かな作品が有する揺るぎない存在感を生み出しているのです。
大井戸猩猩の創作活動の原点、そのひとつとして、屋久島の森での滞在が重要な経験として挙げられます。夜の森で静かに光るきのこや粘菌の様子に触発されるかのように、大井戸は制作に打ち込んできました。緻密に描かれたその絵画作品では、自然が内包するあらゆる生物の存在や生命活動が共鳴しているかのようです。その制作は気が遠くなるような描画の工程を経て、完成までに数年を要することもあります。丹念に描かれた赤、青、緑といった単色の色相に満たされた幾何学的なパターンや、円形の集合体を中心に据えた構図は、まるで曼陀羅のようにも見えます。大井戸は、満月や太陽の姿を写し出したようなその作品群を通して、全てが互いに関係性を持ち、緻密な精神や肉体から無限の宇宙へ連なる、目に見えない繋がりを生み出していくような世界についての総体的な見方を我々に提示していると言えるでしょう。ダイアグラム状の形態の中には作家が作品に費やした時間やエネルギーが凝縮され、キャンバス上には反響を持ったコンポジションが生まれています。 ( 2020-11-21 ~ 2021-01-30 )
この度EUKARYOTEでは2021年1月16日(土)から2月7日(日)の会期にて楊博個展「”Fly me to the moon” sequence1:Nightngale and Rose」を開催致します。
パンデミックに直面した2020年は誰にとっても「距離」は身近なテーマになりましたが、楊博にとってもまた距離、それを本人にとってより的確に言い換えた「遠さ」は、これまでのテーマを踏襲しながら今回の制作にも影響を与えています。
楊博はこれまでも主に音楽や映画といった時代毎のポップカルチャーから引用された言葉や日常的な風景を画面に取り入れ、断続的に流れる映像のようにドローイング的な絵画作品を展開、発表してきました。サブタイトルとして引用されたオスカー・ワイルドの「ナイチンゲールと薔薇」に限らず、全ての文化産物に対する遠回りとして紐解かれる彼にとって身近な風景を描いた絵。本展では芸術作品の創造の連鎖の手前にある「受容」について、また、絵画作品が連続することで生まれる関係性の不条理を、言うならばだらしなさによる喜劇として表現する試みとなっております。 ( 2021-01-16 ~ 2021-02-07 )